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【OKUROJI酒場探訪記】#3
函館直送。本物のウニとイクラの美味しさをカジュアルに味わえる嬉しいお店。

<small>【OKUROJI酒場探訪記】#3</small><br/>函館直送。本物のウニとイクラの美味しさをカジュアルに味わえる嬉しいお店。 <br>
グルメ

2021.03.23

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数々の酒場を渡り歩いてきた酒場ライターのパリッコさんが、主観たっぷりでお店をレビューする新企画、『OKUROJI酒場探訪記』。
第三回は、新鮮な北海道の海鮮が楽しめると話題の『函館海鮮 うにくら 日比谷店』。

Photo:Kyouhei Yamamoto  Text: Paricco 

今回も良きお酒と料理を求め、「日比谷OKUROJI」へやってきました。おじゃまするのは「函館海鮮 うにくら 日比谷店」。店名の「うにくら」はウニ×イクラの造語で、函館直送の魚介類、とりわけウニとイクラの品質にこだわり抜いた居酒屋です。 

店主の泉谷勇二さんは、長く飲食業界で働き、居酒屋店主や仕入れなどを経験したのち、約10年前に独立。現在は水道橋にある「うにくら」1号店の他、立ち飲みの「海鮮 魚升」やサバ専門の「海鮮さば鉄」を経営されており、「どれも自分が好きなもの」と語る筋金入りの魚好き。そんな泉谷さんが以前、函館旅行に行った際にウニの美味しさに感動し、「この味をダイレクトにお客さんに伝えるお店を出したい!」という熱い想いから誕生したのが「うにくら」なのだそう。 

まずはメニューを見渡すと、とにかくお酒がすすみそうな魚料理がずらり。とりわけ嬉しいのが、スプーンに盛った適量のウニ、イクラを気軽な価格で味わえること。ウニやイクラ単品から、ちょっと変わった食材との合わせ技まで、どれもこれもそそられるなかから、5種類のスプーンを注文してみました。

選んだのは、「生雲丹(塩水)」「生雲丹(醤油)」「馬刺しと生雲丹」「いくらスプーン」「ポテトサラダのいくら添え」。食べる前からはっきりとわかります。目の前でキラキラと輝くウニとイクラ、絶っっっ対に美味しい! と。このプレートがぜんぶ自分のものだなんて、こんな贅沢が許されていいんでしょうか……。 

まずはウニの美味しさが最もシンプルに味わえるという「生雲丹(塩水)」からいってみましょう。読んで字のごとく、生ウニに塩水だけをかけて食べるんですが、これがもう……いきなりすごすぎる!

こちらのウニは、函館のウニ加工業者より、海で獲れたばかりのものを市場を通さず空輸されてくるのだそう。なので、そのままでは時間が経つと溶けてしまうウニの形を保つため一般的に使われる添加物「ミョウバン」が不使用。だからこその、ウニ本来のまったりとろりと濃厚な食感。この小さな身に詰まっているとは信じられないほどの旨味と甘み。鼻からは爽やかな香りが抜けてゆき、まだウニの身をひとつ食べただけだというのに、すでに恍惚としてます。
また、「ひとスプーン」というとちんまりとした量を想像してしまいますが、意外にも量がたっぷりなのも嬉しすぎる。これ、箸でちびちびつまんでたら、お酒一杯なんて余裕で飲めちゃいますよ。

さて、そんなお酒の一杯めは、メニューで「ウニとの相性が良い」とおすすめされていたシャンパン「ランソン・ブラックラベル・ブリュット」。ちょっと意外かつ贅沢 なチョイスだけど、そう聞いたら試さずにはいられない! 

これがなんとも爽やかな味わいで、清らかな存在感のウニと奇跡のマリアージュ! まるで脳内に高原の清らかな風が吹き抜けていくような……。
続いては「生雲丹(醤油)」。「うにくら」で扱うウニの産地は、季節ごとにもっとも美味しいウニを求め、1年を通して北海道をおおまかに一周するのだそうです。そんなウニに合わせる醤油にもこだわっていて、わざわざウニの産地と同じ海域の昆布を漬け込んだ自家製。昆布はウニの餌でもあり、この組み合わせが合わないわけがない! 

う、う〜む……これまたすごすぎます。先ほどダイレクトに味わった時とはまた印象が変わり、濃厚なウニと昆布醤油がどちらも負けじと強く主張して、口のなかで旨味が爆発するようなイメージ。こりゃ、お酒がいくらあっても足りないぞ。

さらに「馬刺しと生雲丹」。よく叩いて食感をとろりとさせてある馬肉とウニが驚くほどマッチして、これまた気絶するほど美味しいです。以前に一度、上等な牛刺しにウニを載せた料理を食べたことがあって、それもすごく良かったんですが、すっきりとしていながらもウニに負けない旨味のある馬肉のほうが、ウニにはさらにより合っている気がします。 

さてさて、続いては「イクラ」!  こちらは、産卵期の新鮮な鮭から取り出した卵を一粒一粒丁寧にほぐし、鮮度の良いうちに自家製のたれに溶け込んだものだそう。高品質の証である「特マーク」が3つの、通称「3特クラス」のみを仕入れているそうで、見るからに神々しい! 

「いくらスプーン」を思い切って半分ほど口に含み噛みしめると、プチプチと心地よい食感とともにとろりと溶け、口のなかに皮が残らない衝撃的ななめらかさ! いくら独特のフレッシュな香りと塩気、旨味だけがぶわ〜っと広がります。う、うますぎる……。

「ポテトサラダのいくら添え」は、クリームチーズを使ってクリーミーに仕上げたポテサラとイクラの塩気がばっちり!

5スプーンを食べきり、もうじゅうぶんに幸せなんですが、せっかくなのでその他の料理をもう少しだけ味わってみましょう。
お酒を北海道の地酒「男山」に切り替え、選んだのは「本ししゃも」。  

スーパーなどで一般的に売られているカラフトシシャモなどとは違う、産地が限られ非常に希少価値の高い、正真正銘の本シシャモ。しかも、子持ちではないオスのシシャモ。というのも、どうしても栄養が卵にいってしまうメスとは違い、オスのシシャモは身のうまさが格別。それを知る本場の方は、口を揃えて「シシャモはオスがうまい」と言うのだそうです。 

僕の知っているとは見るからに別物の、まるで鮎の塩焼きのようなありがたみをその身にまとわせているこちらのシシャモ。豪快にがぶりとかぶりつくと、香ばしい皮目、ホクホクと風味豊かで食べごたえのある身。ちょっと別次元の美味しさで、どっしりとした旨味が頼もしい日本酒、男山とのハーモニーが幸せすぎ……。 

思わず同じく北海道の地酒「北の誉」、さらに「鰊の燻製とブルーチーズ」をおかわりし、お互いのクセが良い相乗効果を生んで思いのほか食べやすく、しかしお酒はらとやらとすすむその組み合わせを最後まで堪能。夢のような時間を心ゆくまで味わいつくさせてもらいました。 

ウニとイクラがメインのお店、と聞くと、ちょっと敷居の高さを感じてしまうかもしれませんが、ひとスプーン単位での注文も可能で、日本料理屋や寿司屋などよりもカジュアルに絶品の魚介類を楽しめる「うにくら」。日常にちょっとしたごほうびがほしくなったら、またおじゃましようかな〜。 

【Profile】
泉谷勇二(いずたに・ゆうじ)さん
飲食業界でで長く働き、居酒屋店主や仕入れの仕事を勉強したのち、2011年に「うにくら」をオープン。現在は「うにくら」1、2号店の他、立ち飲みの「海鮮 魚升」とサバ専門の「海鮮さば鉄」を経営。「どれも自分が好きなもの」と語る筋金入りの魚好き。趣味は釣りと自転車。OKUROJIの他のお店で食事をすることも多く、今気になっているお店は「まんてん鮨」。好きな芸能人は石田ゆり子。


【ライターProfile】
パリッコ
1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、他。酒好きが高じ、2000年代後半よりお酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『晩酌わくわく!アイデアレシピ』『天国酒場』『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』『ほろ酔い!物産館ツアーズ』『酒場っ子』『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』、スズキナオ氏との共著に『のみタイム』『“よむ”お酒』『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)『酒の穴』。 

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